SNSやインターネットは、企業が情報を発信するうえで欠かせない手段となる一方、従業員の何気ない投稿や悪ふざけ、第三者による口コミ・誹謗中傷などをきっかけに、会社の信用が大きく損なわれるリスクもあります。
実際に、勤務中に撮影した写真や顧客情報がSNS上に投稿され、企業や自治体が謝罪・再発防止を迫られる事例も発生しています。
もはや「従業員個人の問題」として片付けるのではなく、会社として炎上を防ぐ仕組みを整え、問題が起きた際の対応方法まで決めておく必要があります。
今回は、SNS炎上・風評被害から会社を守るための予防策と発生後の対応について、地方維新塾第4回セミナーで解説した内容をもとに、地方維新塾の主宰弁護士・西村幸太郎が整理してお伝えします。
SNS炎上は「社員個人の問題」では済まされない
SNS炎上というと、「社員個人が勝手に投稿したものだから、会社には関係ない」と考えてしまうかもしれません。
しかし、実際には社員の投稿をきっかけに、会社が謝罪や再発防止を迫られるケースがあります。
2026年4月には、西日本シティ銀行の行員が勤務中に私物スマートフォンで顧客情報を撮影し、その画像がX上で拡散する問題が発生しました。
画像には顧客7名の氏名やパソコン画面などが写り込んでおり、同行は謝罪する事態となっています。

同じ月には、川崎市役所でも、研修資料に掲載されていた外部講師の氏名や勤務先などを新入職員が撮影し、オープンチャットへ投稿する問題が発生しました。

このように、社員個人の軽い気持ちから始まった投稿であっても、ひとたびSNS上で拡散すれば、会社の信用や顧客との関係にまで影響が及びます。
SNS炎上を防ぐために会社が取り組むべき5つの対策
SNS炎上を防ぐためには、社員一人ひとりの良識に任せるのではなく、会社側でルールを決め、教育や監視、規程の整備まで仕組みとして行うことが大切です。
具体的には、次の6つの対策が挙げられます。
- 撮影・録画を禁止する場所を明確にする
- 私物スマートフォンの使用ルールを決める
- SNSモニタリングで炎上の芽を早期に見つける
- 新入社員・若手社員への教育を行う
- 就業規則・SNS規程を整備する
- 違反した場合の懲戒処分を明確にする
それぞれ、個別にみていきましょう。
撮影・録画を禁止する場所を明確にする
まず、社内で撮影・録画を禁止する場所を具体的に決めておくことが大切です。
「業務上知り得た情報をSNSに投稿してはいけない」と伝えるだけでは、社員によって判断が分かれてしまいます。
たとえば、ホワイトボードやパソコン画面、書類、顧客情報などが見える場所での撮影を禁止するなど、具体的に定めておく方法があります。

さらに、撮影不可のゾーンを設定して掲示することで、「ここでは撮影してはいけない」と社員が判断しやすくなります。
私物スマートフォンの使用ルールを決める
撮影禁止の場所を決めるだけでなく、勤務中に私物スマートフォンをどこで、いつ使用できるのかも決めておきます。
具体的な方法としては、次のようなものがあります。

- 社用と私用の携帯電話を区別する
- 私物スマートフォンの利用を禁止・制限する
- 使用できるエリアを限定する
- 使用できる時間を限定する
- 必要に応じてロッカーで保管する
業務上スマートフォンを使う場面もあるため、一律に禁止するのではなく、自社の業務に合わせて利用できる場所や時間を線引きしておくとよいでしょう。
SNSモニタリングで炎上の芽を早期に見つける
ルールを整備していても、SNSへの投稿を完全に防げるとは限りません。
そこで、問題が起きた場合に早く把握するため、自社名や商品名などがSNS上でどのように言及されているかを定期的に確認する「SNSモニタリング」も有効です。

いわゆるエゴサーチを行い、問題のある投稿を早期に発見できれば、炎上や二次被害が広がる前に対応しやすくなります。
担当者を決めて週次で確認するなど、継続して実施できる体制を作っておきましょう。
新入社員・若手社員への教育を行う
SNSに慣れているからといって、業務上の情報をどこまで投稿してよいかを正しく判断するのは難しいはずです。
そこで、新入社員や若手社員には、入社時からSNS利用のルールを伝え、継続的に教育していくことが考えられます。
具体的には、入社時の説明や雇用契約書・労働条件通知書への明記、誓約書、個別研修などを通じてルールを伝えます。入社後も定期研修や社内報などを使って繰り返し周知します。
あわせて、身元保証や競業避止義務、退職後を含めた守秘義務などについても、入社時に確認しておくことで、入社時からリスクを低減できます。
就業規則・SNS規程を整備する
SNSに関するルールは、社員への注意喚起だけで終わらせず、就業規則やSNS規程として明文化しておくことも必要です。
具体的には、次のような内容を定めておきます。

- 業務に関連する情報のSNS投稿を禁止する
- 会社・顧客・取引先を特定できる情報の公開を禁止する
- ルールに違反した場合の処分内容を定める
また、身元保証や競業避止義務、退職後を含めた守秘義務についても、あわせて整理しておきましょう。
SNS上で問題が起きた際に会社として対応するためにも、「何を禁止しているのか」「違反した場合にどう対応するのか」を事前に明確にしておくことがポイントです。
あなどってはいけない「レピュテーションリスク」

SNS炎上は、情報漏えいなどの直接的な被害だけでなく、会社の評判そのものを傷つける「レピュテーションリスク」にもつながります。
たとえば、採用予定者に内定を出した後、不審に思って会社について調べたところ、転職サイトや採用サイトに「ブラック企業」などの悪い口コミが書かれているケースです。
こうした情報を目にしたことで、複数の内定者から辞退される可能性もあります。
SNSや口コミサイトに書き込まれた情報は、採用や取引などにも影響を及ぼしかねません。
悪評口コミへの初動対応はどうすればいい?
とはいえ、会社に対する悪い口コミを見つけても、感情的に反論することは避けるのが賢明です。まず事実関係を確認したうえで、内容に応じて対応を判断します。
対応としては、次のような選択肢があります。

- 返信する場合は「ありがとうございます」など冷静に対応する
- 投稿内容について事実確認を行う
- ガイドライン違反があれば削除申請を行う
- 必要に応じて弁護士名義の「テレサ書式」を活用して削除を請求する
- 優良顧客からの口コミを増やし、悪評だけが目立つ状態を避ける
- あえて反応せず、そのままにしておく
すべての悪評に反応する必要はありません。内容を確認したうえで、削除を求めるのか、返信するのか、放置するのかを判断することが基本となります。
悪評口コミが会った場合の「証拠保全」の方法
会社に対する悪評口コミを発見した場合、削除申請などの対応を進める前に、投稿内容を証拠として残しておくことも考えておきましょう。投稿者が後から削除・変更すると、当時どのような内容が掲載されていたのか確認できなくなる可能性があるためです。
証拠保全では、主に次の4つを行います。

- URLを保存する
- ページ自体を保存する
- スクリーンショットを撮影する(アドレスバーにURLをすべて表示させた状態で撮影する)
変更前のページを確認する:すでに投稿内容が変更されている場合は、Wayback Machineなどで過去のページを確認する
悪評口コミへの対応では、すぐに削除することだけを考えるのではなく、後から内容を確認できる状態にしてから対応を進めるという順番も意識してください。
SNS炎上は「起こさない仕組み」と「起きた後の対応」の両方で備える
SNS炎上は、従業員個人の不注意だけで起こるものではありません。会社側が撮影・録画や私物スマートフォンのルールを定め、社員教育やSNS規程の整備まで行っておくことで、炎上につながる行為を防ぎやすくなります。
一方、どれだけ対策をしていても、炎上や悪評口コミを完全になくすことはできません。実際に問題が起きたときには、感情的に反応せず、事実確認や証拠保全を行ったうえで、削除申請や返信などの対応を判断する必要があります。
SNSは企業の評判だけでなく、採用や取引にも影響を及ぼします。経営者の方は、SNS炎上を社員個人の問題として捉えるのではなく、会社として予防と事後対応の仕組みを整えておきましょう。